ツルアラメ

学名

Ecklonia stolonifera Okamura

青森県での生産量等

不明

栄養成分

可食部 100 g当たり (乾燥)
エネルギー 325 kcal，タンパク質 5.0 g，脂質 2.5 g，炭水化物 72.5 g，食物繊維 52.5 g，灰分 20 g
(出典: 加藤陽治, 他「地域資源 ”ツルアラメ” を用いた教材化の検討」東北家庭科教育研究, No.10, pp.25-30, 2011. 分析値）

特性

ツルアラメは、コンブ科カジメ属の大型多年性褐藻類で、九州から青森周辺の日本海に分布します。水深199 mの海底から採取されたことがあり「最も深いところから採取された海藻」として世界記録を持っています。葉は表面が凸凹で鋸状の縁があり、長さは1 m前後、大きいものは2 mにも成長します。
カジメ属のカジメ，アラメ等、多くのコンブ目植物には見られない葡萄枝からの栄養繁殖によって新たな芽を発出し、この葡萄枝にできる芽の生長による繁殖と、他のコンブ目植物と同じ繁殖の二つの方法により増えることから、非常に繁殖力が強い海藻といわれています。
また、マコンブの寿命が2年であるのに対し、ツルアラメの寿命は5～6年と長寿です。しかし、ツルアラメの商品価値はこんぶ等に比べると低く、苦味や独特のえぐ味があるため、食料や飼料としての利用は限られており、大部分が廃棄されているのが現状です。

繁殖力が強いためにこんぶの藻場を侵食し、「海の厄介者」といわれているツルアラメですが、多量に含まれるポリフェノールや、アルギン酸，フコイダンなど海藻特有の粘質多糖類の供給源であると考えられており、心疾患，糖尿病，高血圧，肥満等の生活習慣病予防、ダイエットなどへの有効活用が検討されています。

主な機能

α-グルコシダーゼ阻害作用，ラジカル消去活性，アポトーシス誘導効果，抗炎症作用，抗酸化作用などが期待されます

機能性成分

ポリフェノール

ポリフェノールは分子内に複数のフェノール性水酸基を有する化合物の総称で、多くの植物に含まれており、色素や渋味・苦味などに関与しています。抗酸化作用をもつ物質が多く、成分によって多様な生理活性が明らかにされています。
ツルアラメのポリフェノール成分はフロロタンニン類であり、血糖上昇抑制作用が明らかになっています。また、ツルアラメの総ポリフェノール量はわかめやこんぶよりも多く、苦味やえぐ味にも関与しています。

フコキサンチン

フコキサンチンは褐藻類に含まれているカロテノイドです。がん細胞のアポトーシス誘導効果，抗炎症作用，抗酸化作用等が報告されています。また、脂肪の燃焼を促し内臓脂肪を減少させる作用により、抗肥満や抗糖尿病作用が明らかになっています。

アルギン酸

アルギン酸は褐藻類の粘性多糖類で、ナトリウム塩は水に溶けて粘稠になるので増粘剤として使われます。また、消化管内で水分を吸って膨潤し、栄養素の消化吸収を遅延させたり、ナトリウムを吸着することで余分な塩分を排出して血圧を下げる効果もあります。
ツルアラメには、こんぶと同程度のアルギン酸が含まれており、コレステロール低下作用，血圧低下作用，整腸作用が期待されます。

セルロース

セルロースは人間の消化管内では消化できないため、エネルギー源として直接利用することはできません。水に溶けない不溶性食物繊維で、腸管を刺激し便通の改善などの整腸作用、有害物質を吸着する働きから有害物質を排泄し、大腸がんの予防効果があります。腸内細菌叢の改善にも役立ちます。

ミネラル

ミネラルは、五大栄養素の1つで、骨や歯など身体の構成成分になるとともに、体の調子を整える働きがあります。「無機質」ともいいます。栄養素として必須のミネラルは13種類あり、食事摂取基準ではナトリウム，カリウム，カルシウム，マグネシウム，リンが多量ミネラル、鉄，亜鉛，銅，マンガン，ヨウ素，セレン，クロム，モリブデンが微量ミネラルと定められています。
ツルアラメのミネラルではナトリウムが多く、次いでカルシウムが多く含まれています。カルシウムの含有量は乾物100 g中800 mgで、海藻類では8番目に相当します。

利活用、応用の方法、用途など

柔らかい幼若海藻は生で、そうでないものは天日乾物として出荷されています。ツルアラメを細かく刻み、甘辛いだし醤油に味付けした漬物や、乾燥させて味噌汁の具材等に加工されています。

素材化する場合は、熱水やアルコールにより機能性成分を抽出するのが良いと考えられます。

ツルアラメを食物繊維の給源として利用することを目的に、調理加工法に関する研究も行われており、ハンバーグの場合、粉末や角切り，細切りより、ミキサー粉砕が適しています。中学校家庭科で必ず取り上げられるメニューである｢ハンバーグ｣へのツルアラメの添加、調理加工法を検討したところ、ツルアラメ独特のえぐ味やぬめり感を感じさせないのは、ツルアラメの粉末や角切り，粉末+角切り，細切り，ミキサー破砕のうちミキサー破砕で、一般的な一人分ハンバーグ生地にミキサー粉砕したツルアラメ4 gの添加で、1日の摂取目標の約10.4%の食物繊維を摂取できることがわかりました。

研究機関